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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

新しい市場づくりを目指すドコモ

そろそろシステム構築(SI)の話をしたくなってきたので、話題を戻そうかなと思いますが、
ちょうどプレジデント2006.3.20号にワンセグについての夏野剛氏の記事が掲載されていたので、
今回だけ携帯電話ビジネスネタを続けたいと思います。


さて、まずは携帯電話の市場の話から。
2005年12月には、9017万件を突破した携帯電話の新規加入者数は既に頭打ちになっており、
市場は飽和してしまっています。
加入者争いで考えれば、今はそのパイをいかに分け合うかという状態にあります。


そこで、ドコモやau、vodafoneなどの携帯電話キャリアは利益を伸ばすため、
次にどうすべきかを考えました。
基本的には、利益を考えるとき [ 利益 = 単価×数量 - コスト] が成り立ちます。
つまり、利益増加のためには以下のふたつの策を考える必要があります。

  1. 単価を上げる
  2. 数量を上げる


これらは、携帯電話市場において、(1)がARPU + サービス料金、(2)が新規加入者と置き換えられます。
ARPUは一人あたりが使用した通話料や通信料の平均を表す数字です。
冒頭で記載したように、新規加入者の増加が見込めない今、キャリア各社は「いかに客単価を上げていくか」ということに対して戦略を練っています。


この問いに対し、ドコモは「i-mode」の機能拡張をコアに、「おさいふケータイ」などのソリューションを打ち出しました。
対して、auは「着うた」に続いて「LISTEN MOBILE SERVICE」を打ち出しました。
一方、vodafoneはTV携帯以来、「LOVE定額」などの料金ディスカウント策しか打ち出せていないという認識です。


そして、続けて各社が戦略として考えているのが「ワンセグ」サービス関連ビジネスになります。
「ワンセグ」サービスとは、移動媒体(ここでは、携帯電話)にTV映像を受信することだと考えてください。


ドコモの夏野氏の読みとしては、「ワンセグサービスを使い、日常生活に浸透したTVというメディアを通じて、ライトユーザに対し、アクションを起こさせる」
という意図があるようです。


これは、ドコモの顧客をARPUの観点からセグメンテーションすると、ほとんどがパケット定額制を利用するヘビーユーザー2割とその他のライトユーザ8割に分かれるからです。


つまり、8割のライトユーザの単価を上げれば、ドコモの利益も大幅に増えるという読みです。


そして、そのライトユーザを引っ張り上げる策として、ワンセグをいかに使い、お金を使ってもらうかというビジネスモデルの構築にドコモは腐心していることになります。


その一手として、ドコモはフジテレビの株を2.7%取得し、業務提携を持ちかけました。
その先に見えるものは、成功事例の確立です。


ドコモはiモード立ち上げの際も、まず手堅いと言われる銀行と提携することを目標とし、行動に移しました。
まず、当時の住友銀行と契約し、成功事例を作りました。そして、横並び意識の強い銀行と次々と契約を結んでいきました。


さらに、銀行と提携しているサービスという信頼感を作り上げたことで、波状効果が生まれ、次々と他業種のコンテンツプロバイダと契約を結ぶことに成功しました。*1


成功事例を作り、他社をそのビジネスモデルへ引き込む。
ドコモはi-modeの成功体験を踏まえ、ワンセグでもこれを実行しようとしています。


ここで、ワンセグのビジネスモデルについて考えてみたいと思います。
課題点は以下のふたつかと思います。

  • ライトユーザがワンセグに惹きつけられるような魅力的なコンテンツ、もしくはサービスが提供できるのか
  • メディア側の収益をどのような形で生むのか


コンテンツの面から見ると、サイマル放送*2解除までは携帯電話のワンセグのメリットは「外でTVが見られる」の一点のみとなります。
また、サービスの面では、広告をテレビのような視聴型ではなく、ネット広告のようなユーザ嗜好型にすれば、魅力的なサービスになり得るでしょう。


一方、メディア側の収入としては、基本的には広告での収入になると思われるため、
携帯側に認証機能などを備え、アクセスごとに通信料の一部を支払う体系を作り出すのかもしれません。


何にせよ、携帯キャリアとメディアの両者の収益性の実現。
つまり、Win-Winをいかに構築するかにかかっていると思います。
今後もウォッチしていきたいと思います。


私自身は、ワンセグ市場の立ち上がりはかなり鈍いものになるのではないかと思っています。


※ 各データは「プレジデント2006.3.20号」を参考にしてあります。

*1:この辺は書籍「iモード事件」に詳しいです

*2:現行のテレビ放送と同内容の番組を流すこと