大企業に勤めるから「安定」なんだろうか?
元同僚の友人と話していて、「安定」に関する定義は人によって
違うなあと感じた。
わかりやすい「安定の定義」は以下の3点になるだろうか。
[1] 大企業に就職し、勤め続ける事
[2] 手に職つけて、食いっぱぐれがないようにする事
[3] 公務員になり、勤め続ける事
ただ、実は上記[1]には前提が必要である。
大企業に就職し、勤め続ける事で「安定」する条件
・携わる市場規模が継続、もしくは拡大すること
市場自体が縮小する可能性もある。
例えば、鉄鋼などはそうであった。
・携わる市場を奪う脅威がない事
脅威に関しては自分の業界をファイブフォース分析にあてはめて
みればよい。
以下、事例もふまえて紹介する。
1. 買い手の交渉力は強まらないか?
- 消費者が価格comなどでクチコミ情報を集めるようになり、
TV CMなどのマス広告だけで判断しなくなった。
2. 供給企業の交渉力は強まらないか?
- 日産の部品・運送会社がトヨタなどにも供給し始め、言う事を
聞かなくなった。
3. 新規参入業者の脅威はないか?
- 中国、アジア諸国、インドの安い労働力が提供されてきた。
- グループウェア市場を寡占していたロータスにベンチャー企業である
サイボウズが参入してきた。
4. 代替品の脅威はないか?
- 携帯電話が固定電話市場を奪った。
- 電力会社(オール電化)がガス市場を奪った。
- FAや会計ソフトによる自動化が担当者の仕事を奪った。
- インターネットからニュースを取得するようになり、新聞の購読数が減少した。
5. 競争企業間の力関係はどうか?
- プラズマに資本を積極投入し、松下電器が日立を置き去り
にし、シェアを寡占した。
手に職があり、安定であるはずの[2]にも上記前提が絡む。
というのは手に職があっても、3、4あたりの事情は知っていないと、
いつの間にか付加価値が下がっているケースがあるからだ。
いまは直接弁護士事務所に行かずとも、インターネットでプロにも相談できる時代になった。
また、同じ価値を提供するのであれば、安価なものに流れるのは当たり前の事。
だから、手に職があったとしても市場環境を知るために情報収集する情報元を
持っておく必要がある。
公務員だから安定、であるはずの[3]に関しては、政策による
公務員削減には逆らえない側面がある。
郵政公社も政策により生まれ、民間化する以上はコスト競争に巻き込まれ、
社内淘汰は必ず起こるだろう。
現に郵政公社の公共料金の振替手数料を民間金融機関並みに下げろとの要求も既に
入ってきている。
かといって公務員から民間に転職するといっても各省庁に入るほどのエリートでないと、
なかなかつぶしが効かないのではなかろうか。
以上がさくっとした概要なんだけれども、何が言いたいかっていうと、
「安定」っていうのは[1][2][3]のように簡単な公式で表せるもの
ではなく、紹介したような様々な変数が絡み変動するものであり、株と同じくらい
見極めが難しいものだと言う事。
だから、思考停止してしまうと何が「安定」かを見失ってしまう。
例えば、「大企業=安定」という公式は定説だが、
いい加減、過去から学んで捨てた方がいい。
アンダーセン(米)、エンロン(米)、山一證券、カネボウ、
青山監査法人くらいの大手であっても自分の関係ないところで
事件が起きて、ぽしゃっちゃう時代。
リクルートだって、あのリクルート事件で屋台骨が大きく
揺らいだ。(そこから復活するんだから、ぐぅの音もでないが)
IBMもノートPC事業を中国の会社に売却したし、経営危機に陥った際に
多くの社員がレイオフ(クビ)になった。コダックも同様だ。
そして、大企業の事業の切り売りは日常茶飯事。
先もソニーが東芝にCELL事業を売る売らないのニュースが出ている。
結論として、[1][2][3]だから「安定」とは言えない。
「安定」と言えるのは、以下の条件を満たすときだと思う。
「安定」の条件
▽ 仕事
・仕事のスタンスやビジネススキルのベースができている
・自信を持って人に言える実績をつくり続けている
▽ 学習
・常に学び、何が付加価値かを探している
・自分なりの付加価値をブラッシュアップしている
・将来に対し、時間と資本を投資し続けている
▽ 人脈
・多方面にエッジのある情報を持つ人脈を持っている
・かつその人達からの信頼がある
上記の「安定」に関する条件は、昔から変わっていない事だが、
最近は顕著に[1][2][3]の公式が崩れつつある。
グローバル化とインターネットの発展により、世界がフラット化
し、情報が表面化してきているからだ。
この状況下では、格差はいやでも加速する。
この格差はグローバルレベルで起こっている資本、資源の再配置の結果であり、
日本政府だけでコントロールできるものではない。
だからこそ、学び続け、チャレンジし続ける人は競争優位性を生み、
それが「安定」につながるのだと考えている。