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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

即戦力と成長曲線の間の矛盾

即戦力や即業績というのって、必ずしも企業側だけのメンタリティ
じゃないような気がする。
学生の側だって案外そうなんじゃないのか?


すぐに戦力になりたい、すぐに業績を出したい、すぐに認められたい。
そのどれもが無理だというなら、「俺は仕事を辞めるぞジョジョー!」
と言い出したり、本当に辞めてみたり。この図式って、本当に
「すぐに業績の出ない新入社員に企業側が苛立っているが故」
だけなのだろうか。
逆に「すぐに業績を体験させて貰えない企業側に新入社員が
苛立っている」成分も含まれているのではないだろうか。


from すぐに結果が出ないと我慢ならないメンタリティ by シロクマの屑籠(汎適所属)


「わが社は即戦力を求めている!」


そう叫ばれて久しい。
私が就職活動をしていた2003年度は日経平均7,000円台。
出口の見えない不況感があり、企業側もかなり採用を絞っていました。


インターン制度も今ほど盛んなわけではなく、企業側も
将来に投資する自信と時間がなかったように思います。


上記のようなマクロ要因の影響もあって、大学のころは
「即戦力でばりばり働けるSEになりたい!」と思い、活動していました。


現職プログラマの方にアシストしていただきながら、
プログラミングを学び、書籍や先輩と話し、業界知識を吸収し、
就職活動を行い、社会人生活をスタンバっていました。




が、入社してすぐに気づいたのは、あくまで「知識は知識であり、
現場ですぐに活かす事はできない。」ということ。


例として、プロジェクト管理のフレームワークである「PMBOK」を
挙げます。


PMBOK」と「IT業界の知識(ビジネス+IT)」があれば、
経験が浅いSEでも大規模プロジェクトは回せるのか?


結論から言うと、答えはです。


座学で「PMBOK」や「IT業界の知識」を暗記することは可能ですが、
その表面だけを暗記したとしても、本人の腑には落ちていないし、
現場で適用できません。


なぜか?


PMBOK」はPPMなどの戦略フレームワークと同様、
上流の抽象的な概念になります。
それを現場で当て込む時になくてはならないものがあります。
「現場感」です。


現場には必ず「制約条件」があり、
都度発生するイレギュラーな事象が更にその制約条件を増加させます。
その対処にコスト(時間/リソース)を使いながら、現実的なプロセスを選んでいく必要があります。


これは、ビジネスだから当たり前の事なのですが、その「制約条件」
に対する対応の成否は、「経験」に基づくところが大きいです。
なぜなら、「経験」がない場合、自分のアタマの中にあるケーススタディが少ないため、
やり方がわからないからです。


そして、制約条件に対する対応として、現実的なプロセスを策定/実施するには
「業界の文化」や「組織の文化」など
「文化」が大きく絡んできます。


「文化」は、文言だけでは理解できません。
体にしみ込ませる事が必要です。
ここにも「経験」が絡んできます。
(文化を理解し、理想とのGAPに葛藤しながら、文化を変える。
 これがつまり、「改革」ということになります。)


様々なケースを自分のアタマのライブラリに叩き込み、文化をアタマにしみ込ませ、
その上で「PMBOK」などのフレームワークを当て込む必要があります。
そうすれば、プロジェクトの成功比率は上がります。


逆に言うと、文化を理解した上で行動できればPMBOKがなくとも
戦略的にプロジェクトを動かす事は可能です。
(ベストプラクティスがない分、スピードは遅くなる可能性はありますが、
 下手に手を出すよりはだいぶましです。)


よって、「現場感→十分条件」、「PMBOK、IT業界の知識→必要条件」


「現場感+戦略性」が実際のプロジェクトには必要だ。
という事になります。


これは座学も必要だが、それは必要条件であって、十分条件ではない。
ということです。
ここが、唯一解のないビジネスの世界の特徴ともいえます。


私は、十分条件であるこの「現場感」を身につけるのに、
おおよそ2年程度は必要かと思います。
これは社会人生活に限らず、(種類にもよりますが)学生時代の
インターンやアルバイト、サークル活動など社会人になった際に
役立つような疑似体験も含まれます。


ここで、「即戦力」と「現場感の育成に必要な時間」にGAPが
生じます。


そもそも、成長曲線はしばらくは傾きが停滞した上で、
2次関数的にぎゅんと上昇します。


横軸が「時間」だとしたら、上昇を描くまでに最低2年程度は
必要ではないかと思います。
(人事担当者も経験からそう話す方が多いです)


「即戦力」という理想(幻想?)を抱えて入社する新卒に降りかかる
成長曲線のGAP。
そして、第二新卒の誘惑。


ここで、新卒が第二新卒としてばかすか転職していくと、
「日本の競争力」という観点から見て、なんだかおかしな事に
ならないかなーと不安です。


「フリーター」というワードを流行らせ、今の状況の一因となった
のはリクルート社のある雑誌と言われています。
今、リクルートは免罪符のように社会人経験のないフリーターの就職支援を行う
「就職Shop」の開設やタウンワーク社員/From A Navi社員などの正社員化
サービスを続々と投入しています。
(こちらも正社員市場が拡大してるからと言えなくもないですが。。)


はたして、第二新卒マーケットを拡大して大丈夫なのかな?