てめぇでメシを食っていくチカラを養えるベンチャー企業
SIerであった大企業とベンチャー企業を比べたとき、
後者だからこそ養えるものとして、「てめぇでメシを食っていくチカラ」
があると思う。
例として、SIerで「受注する」という時、
- 財閥関係を含む過去の連綿とした関係
- 財務、信頼としての与信
- 企業としての多くの実績
これらをベースとした上で、「提案」が通るか否かが決まる。
いくら鋭い提案だからといって、上記を満たさなければ
コンペのテーブルにすら乗れない事はざらにある。
これは、システムの納品に数ヶ月、場合によっては数年必要であり、
その間に企業が倒れてしまったら困る事、
システムのサービスインの遅れにより、クライアント自身が
競合に対して致命的な競合優位性を失ってしなう可能性がある事、
継続的に関係を保っていく事で、クライアント側も
コミュニケーションコストが減るし、リスクも減る事が挙げられる。
よって、受注したからといって、「100%その人だから発注した」
と正面切っては言えない世界がSIerだと思う。
対して、ベンチャー企業で働く限り、ブランドや過去の実績に頼る事はできず、
会社説明からはじめ「自分の言葉」で「商品」をいかにアピールできるか、
がキモになってくると思う。
ササるかササらないか、が営業マン一人一人の能力に大きく依存してくる。
それは、まさに「てめぇでメシを食うチカラ」を養うにはうってつけの場
なのである。
取引先は「その人と一緒に仕事をしたいから」という1点の理由で
競合より劣る「商品」に対して発注し続けてくれる事もままある。
しかも、見る目がないわけではなく、見る目を持ちながらもあえて
そうしてくれるわけだ。
それは、営業冥利に尽きる事だろうと思う。
私はベンチャーに移るまで、「ナショナルクライアント」という
ワードを知らなかった。
大企業ではそんな事を気にせずとも、必然的にクライアントは
ナショナルクライアントだったからだ。
だが、ベンチャーに移ると
「ナショナルクライアントの口座(アカウント)を開設する事」
がいかに大変な事で、だからこそいかに名誉な事かを知った。
そして、実際に実績をつくっていった時は、喜びも一塩だったし、
トラブルを乗り切っていった過程で、言葉にはできない成長を
したんだと思っている。
ベンチャー企業において、一人一人の業務範囲は幅広い。
リーガルチェックも発注書、請求書の作成も会員獲得も
本来の業務にプラスオンでやらざるを得ないケースがある。
しかし、だからこそ企業対企業のプロセスの一部一部を
体験でき、それが「てめぇでメシを食っていくチカラ」
に繋がっていく。
業務を適材適所で分散させない、という事は中長期的に
個々人のスキルを高める事もある。*1
(もちろん、限度はあり、何でもやれる人にやらせるのは中長期的にも
損失になりえるが)
ただ、「てめぇでメシを食う」といっても、往々にして、
「目の前のメシ」が対象になってしまっている気がしている。
しかし、それだけでは足りない。
そこで身につけるべきは、大企業だからこそ身につくスキルである。
それを次回のエントリで述べようと思う。
p.s.
余談だけれどもどうも自分は、
「てめぇでメシを食っていくチカラ」
に対するハングリーさが強いようだ。
実は近い親族にサラリーマンがいなかった。
父方も母方も事業をやっていたからだ。
その中で、商売繁盛と衰退を幾度か繰り返していくのを
間近で見ていた。
自分にとって、事業というのは近しいものだったんだろう。
成長の過程で、
- 一生懸命やるだけでは儲ける事ができない
- 下流工程にいる事により、どうしようもない事がある
- イノベーションにより、品質で劣る代替品に取って変わられていく
そういった過程をまざまざと見せつけられた。
意識はしていなかったけれど、多分そういった事象が記憶の奥底に
叩き込まれており、だからこそ「てめぇでメシを食っていくチカラ」
に対する欲求が強いのかもしれないな、とふと最近思った。
*1:リクルートはあえて子会社や業務分担をカニバらせるようにしているようだ。