SIとフレームワーク 3
SIerはどういった戦略に基づき行動し、利益を上げていけばよいのか?
この仮説を考える前に他社が実行してきた戦略について考えてみる。
- Case1:IBM
現在のIBMは
かつて現在のマイクロソフトのように汎用機を含め、
一社独占体制であった米IBMは、まさにイノベーションのジレンマに
陥り、リストラクチャリングに始まる非連続の経営を余技なくされた。
そのとき、CEOとして迎えられ、同社の舵を大きく切ったのが、
マッキンゼー出身でRJナビスコの再建に携わったルイス・ガースナー。
彼は現在、世界最大のファンドとして名を連ね、DDIポケットをWillcomに
変貌させたカーライル・グループのトップである。
彼が下した大きな決断は3つ。
- モノ事業(ハードウェア)主体からコト事業(サービス)に売上比率を大きく転換させた事
- 事業を子会社に分割しなかった事
- 汎用機事業を切り売りしなかった事
変革の過程は書籍「巨象は踊る」に詳しい。
当著は、IT業界に携わる方、そして志望する方は必ず読むべきだ。
示唆に富み、また業界の問題点を見事に指摘している。
さて、話を戻すと、その時下した決断と遂行してきた戦略により、
IBMは先行者メリットを十分に受領し、利益を挙げてきた。
しかし、それも少しずつ崩れつつあるようだ。
その後、多くのSIerやコンサルティング会社がIBMの在り方を
モデルケースとした。
SIerはサービスにシフトし、各社とも上流からの一貫した
システムインテグレーションを目指している。
だが、上流工程の中でも業務プロセスの変革を含む提案の領域に関して、
既存のSIerにはノウハウ、ブランド力が欠如しているケースが多いため、
そのGAPを埋めるために、コンサルティング会社を買収するケースが相次いだ。
例として、NEC:アビームコンサルティング買収、NTTデータ:キャップ&ジェミニ買収、
富士通:海外コンサル会社買収&アクセンチュアと提携
などがある。
逆に、コンサルティング会社は経営と直結するITという観点から、
戦略的アウトソーシングまでサポートしますといった肩書きで
攻めてきている。
SAPやi2などパッケージ会社と提携し、ERPやSCMの観点からの業務改革を
提案してきている会社が多い。
ここで1点考えなければならないことがある。
とりわけIT投資額が大きい先進国において、経済規模が大きく変化することはない。
そのため、競合が増えることは=パイの奪い合い
になっていくということになる。
他社と重なる事業領域の割合が次第に増えていくにつれ、
IBMの先行者メリットは少なくなっていった。
また、IBMのパイを狙い撃ちし、リプレースをかけていく
インドのインフォシスのような企業も現れた。
そして、アウトソーシングを甘んじて受けていた顧客企業
の反応も変わってきた。
現在は、アウトソーシング契約の打ち切りも増えてきていて、
次なるビジネスの在り方を模索している段階だろう。
(この要因はいくつかあり、私が担当しているクライアントもその1つであるため、
台所事情もよく分かるのだけど、言及はまた次の機会に譲る)
さて、現在IBMは、ミドルウェアという切り札をもって、
戦いを仕掛けている。
個人的にはSAPとIBMの一騎打ちといった感覚である。
IBMのケースは多くのSIerにとって参考になるため、
是非知識として知っておいていただきたい。
次は、ソフトウェアベンダとしてSI事業を行う日本オラクルについて
考える。
- 作者: ルイス・V・ガースナー,山岡洋一,高遠裕子
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