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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

SI(≒受託開発)の可能性を探る

受託開発における2つのエントリを読んだ。


SIに責任ある立場として携わってきたものとして、これらの主張には納得できる。
と同時に、一度SIビジネスの現状と今後について、明文化したい衝動に駆られたので、
シリーズとして、複数回に渡ってエントリしていきたいと思う。


まずは2つのエントリに対する所感から。

仮に蓄積した経験や、個人が取得したノウハウ何らかの形で
組織のためにストックされたとしても、
それが次のプロジェクトの利益になっているという例は
殆ど聞いた事がない。


IT業界の働き方、受託がいい?幻想だと思うけど。。。


現象としては、上記で正しい。


原因としては、マネジメント層が暗黙知形式知化する事自体に
価値を払っていない事が多いため、
「適切な情報を情報資産として、伝達する風土」
が作られず、真に重要な事がOUTPUTされないのではないか?
それが、次に活かされない原因ではないかと感じている。


各論で考えてみる。

  1. 何を抽出していいか分からず、そもそもOUTPUTされていない
  2. 情報資産が縦横に伝達されていない
  3. 情報資産が汎用的な情報レベルではない
  4. 必要な情報資産を発見できない


実は、(1)で止まってしまっている場面はすごく多いと思う。
これはこれで、非常にスキルフルな領域である。
経験とセンスが必要であり、かつ広い視点が必要。


(2)は事業部制などによる弊害により、縦割りの組織構造が
引き出している面が大きい。
最近、これは大きくは社風に依存するのだと感じるようになった。
組織デザインなどに起因する深い問題である。


(3)は実は一番難しいのではないかと思う。
これさえできれば、異なる部署への伝達は出来ずとも、
自部署内には伝達できるからだ。
しかし、各固有の条件の中でのプロジェクトの事象を一般化して
情報資産に落とし込む事自体がかなりのスキルを要すると思う。
「具体的な事象だけでなく、フレームで見る力」
を養わなければならないからだ。


(4)はツールと社内マーケティングの問題。
ツールありきでもダメ。いかに使ってもらい浸透させるかが重要。


コンサルティングファーム、リクルートは
こういったナレッジマネジメントの部分ではかなり進んでいるようだ。


って書いていたら、なんか非常にスキルフルじゃないとダメ
なんじゃないかって思えてきた。


プロジェクト終結時に、そういったスキルを持つコンサルタント
(プロジェクト外の人間)に当事者へヒアリングをかけて、
形式知化し、適切なカテゴリ分けを行い、情報資産の社内の商流へ流す。


そういった事をすればいいのかもしれない。

これまで労働集約的に働いてきて、営業も出来ない経営も分からない
マネージャーと社員が接する時間が増えるということは本末転倒
(社員がマネージャーに愛想を尽かす)になりかねない。


IT業界の働き方、受託がいい?幻想だと思うけど。。。


現場は分かっているが、経営が分かっていないマネージャが
残念ながら、ほとんどだと思う。



「現状」に対する対処は素晴らしいのに、「未来」に対する対処
になると途端に見えなくなっている。


今回のエントリ群では、その「未来」に対する予想を記載したい。

『受託開発を「うまくやれば」自社開発にも弾みがつく』というものだが、
そもそもそれができる企業は自社開発を最初から行うはずだ。


重層下請け構造の中では、顧客の声は歪曲され、決めたはずの仕様は
一方的に変更され、予定通りの開発すらままならない。


結果として投下資本の無視できない割合が書類コストと調整コストに
消えてしまうため、技術資産の蓄積どころではない。


「中毒性」ある受託開発がソフトウェアベンチャーの躍進を阻む


先にも述べたが、受託開発(過度にカスタマイズされたもの)を
自社開発(汎用的なパッケージ)に落とし込むスキルは
高度なものなのである。


このスキルを高度なレベルで昇華し、実現しているのがSAP社のパッケージだと言える。
一貫してパッケージとしてしかビジネスをしない姿勢は潔いと同時に、
容易に他社がマネできないのは、そういった人材を集めるのが困難である事も一因である。


SIerとして、いろんな開発会社と接してきたが、汎用化のスキルを持つ人は
ごくわずかだ。(何百人中、ほんの数名である。)


アプリケーション・アーキテクトは同様のスキルを要求される。
この職種が今市場に少なく、求められている事自体がそのスキルの高度さを表している。




さて、上記エントリでは受託開発の問題点について、
具体例を挙げている。


SIビジネスに携わっている方なら納得し得る点も多いのでは
ないかと思う。


私はこのエントリを読んで、SIビジネスについて、もう一段上のレイヤから
経験に基づく所感を記載してみたい。


競争戦略を見るフレームワークである「ファイブフォース分析」にて、
SIビジネスを見てみたいと思う。


ファイブフォース分析は大きく5つの視点によって、企業の競争力
を計るものである。

ファイブフォース分析の5つの視点

  1. 新規参入
  2. 敵対関係
  3. 代替品
  4. 買い手
  5. 供給業者


次回以降のエントリで、各視点を掘り下げていく。