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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

ギークとスーツの糊づけ

あの時代のソニーに特有の問題として特に注目すべきなのは、
あの時代の出井陣営と久夛良木陣営の対立に象徴される
「スーツ族とギーク族の軋轢(あつれき)」ではないかと私は考えている。


結局のところは、出井氏を中心とするスーツ族(ソニー内部では「文官」
と呼ばれていたそうである)が久夛良木氏を代表とするギーク族(もしくは
「技官」)の心をつかむことができず、せっかく出井氏が持っていた
ビジョンを実行することができなかった、というのが私なりの解釈である。


そういう見方をすると、アップルにとってスティーブ・ジョブズの存在が
とても重要だったことが逆に良く理解できる。「スティーブ・ジョブズ
偶像復活」にも書かれている通り、スティーブ・ジョブズはエンジニア
ではなくマーケティングの天才。
その意味ではギーク側の人ではなくスーツ側の人だが、
普通のスーツ側の人と大きく違うのはギークの心をつかむのが天才的に
うまいこと。
そんなカリスマ性を持つリーダーがはっきりと方向性を示したからこそ
あれだけのことをこれほどの短時間に成し遂げることができたのである。


テクノロジーの会社が伸びるときというのは、ギーク族の心を
つかむのが上手なスーツがリーダーシップをとったとき(ここ数年の
アップル)、抜群のビジネスセンスを持ったギークがリーダーシップを
とったとき(90年代のマイクロソフト)、ギークとスーツが絶妙のコンビを
組めたとき(昔のソニー)、のいずれかが成り立った時だけなのかも
しれないと思う今日この頃である。


なぜアップルにできたことがソニーにはできなかったのか via Life is beautiful


ギークだけでも仕方ないし、スーツだけでも革新的な
サービスリリースはない。
間が抜けてしまうので、ちぐはぐになってしまう。


どちらが悪いとかではなく、歩み寄らなければならない。
どちらかといえばスーツ側が。


理由として、経験則からハッカーがビジネスに詳しくなると
ハッカーとしての力量が落ちるのではないかと感じているからだ。
なので、ギークは自分の業務に専念し、その力を最大限に活かす
スーツ側の人間が必要なのではないかと思われる。


要はその人間がギークとスーツの糊づけをやればいい。
が、この層が少ないというのがdankogai氏の言い分であり、
実際にそのとおりだと思う。


なぜその問題が今まで浮上しなかったのかという理由を、
以下のように考察している。


製造業において、ハードウェアはあくまで物理的に存在するので
見て触る事ができる。
そこから、マーケティング部隊に橋渡しをし、マーケティングは
専門の担当が実施する。
なので、開発者とビジネス側の受け渡しもうまくいった。


しかし、ソフトウェアの世界ではマーケティングの境界があやふやだ。
たいていWeb2.0ベンチャーなどはそれがごちゃごちゃしたまま
進んでいるような印象を受ける。


その中でIPOにこぎつけたmixiドリコムは機能うんたらというより、
SNSとは?ブログとは?のところの話題性でメディアを食らいつかせ、
マーケティングにおおいに役立てていた。
SNSに関して、so-net出身が社長を務めるGREEより、東大出身が社長の
ミクシィの方がホリエモンつながりでメディアとしてネタにし易かった
というのも少なからずあるはずだ。
ドリコムも同様で、社長の経歴が大きなポイントかと思われる。


要はmixiドリコムは時流に乗った事が大きなファクターであり、
サービス如何というところでうまくマーケティングを展開した
わけではない。
mixiは会員拡大の際にリアルな学生ネットワークを使ったんじゃないかと個人的には推測している。
理由はまたの機会で。


サービス如何を考えて、マーケティングを視野に入れると、
広告出稿やPRだけでなく、サイトやフォームのデザイン、UI、
アクセス解析まで深く考えていく必要がある。
この領域はスーツ側の領域ではないだろうか。


が、現状はデザイナーがいて、サイトデザインやUIのところで
ギークと更に分断される。
私はそこらへんにブレークスルーの糸口があると思う。


そこを一気通関にズガッと渡せる人間は確かにあまりいない。
日本発のオリジナルで優れたWebサービスを生み出すために、
ここの人間の厚みを増やすというのが課題なんじゃなかろうか?*1

*1:エニグモはやれてますね。エニグモはCTOがうまく機能させていると推測しています