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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

SIerとしてキャリアを積んで良かったと思える10の理由


各所で「SIerは泥のように10年働くのか?」「いやだ」とか、
何やらいろいろと議論されているが、私自身はファーストキャリアが
SIerでよかったと思っている。


それを「SIerとしてキャリアを積んで良かったと思える10の理由」
として具体的に述べたいと思う。
今後、SIerとして日本のビジネスプロセスをバックグラウンドで
支えていく、多くのエンジニアの参考になれば幸いである。


1〜6はマインド面にとって良かった事。
7〜9はスキルセットとして身につける事ができた事。
10は私自身が確信している事。


ここで述べるSIerは「クライアントのシステム構築の請負を主な業務
とするシステム構築業者」の事だと思っていただきたい。

1.勉強ぐせがつく。

テクノロジーの陳腐化するスピードが早いため、常に知識を
アップデートしていかなければならない。
資格の種類もOS、アプリケーションサーバ、データベース、
プロジェクトマネジメント、ソフトウェア開発全般、プログラミングと幅広く、
数も多い。
例えば、同じOracleでも10gが11gにアップデートされれば、10gの資格を
持っていても、11gになって何がどう変わったのかを把握しなければ
ならない。
よって、「学習」という事に対して、社会人になっても余念がない。

2.付加価値に対する危機意識が強くなる。

上記のようにアップデートされた知識についていかなければ、
自分のスキルにおける付加価値を失う事を知っている。
よって、危機意識が強い傾向にあり、常に「自分の付加価値は何か?」を
考えるようになる。

3.自己投資が当たり前だと考えるようになる。

上記、資格の勉強にも言える事だが、プライベートの時間を使って、
自己投資する事がSIerという業界だと当たり前である。

4.将来に向けたキャリア設計を考えるようになる。

もともとデフォルトで「プログラマシステムエンジニア」や
「下流工程→上流工程」みたいなキャリアパスがあるおかげで、
SIerはキャリア設計について考える事が普通である。


しかも、節目で管理職につくかプログラマなどのプロフェッショナルとして
現役を続行するかといった議論についても、常に熱心に
なされており、キャリアについて考える機会が多い。

5.自己客観性が高くなる。

SIerは基本、人月というその人自身に対する単価が設定される。
クライアントによるエンジニアの評価やプロジェクトメンバーの選定の
機会などが、その人自身の実績や成果物に対する評価に対してなされ、
単価が決まる。
よって、「自分はこうだ!」という自己中心主義や営業にありがちな
「サービスが駄目だから」という他責が通じる世界ではなく、
「クライアントやプロジェクトマネージャが自分自身をどう評価しているか」
というところに常にさらされている。


よって、自己客観性が高くなる傾向にある。

6.PDCAサイクルに準じた思考のくせがつく。

SIerはプロジェクトは計画して、実行して、修正して、リカバーする事が
当たり前という思考を持つ。
よって、自然とPDCAサイクルに準じた仕事の手順を踏むようになる。


例えば、概要設計において、すべてのファクターを包括する事ができず、
プロジェクトを進めていくうちに新しい要件や懸念事項が出てくる事を
SIerは理解している。
PMBOKによれば、「段階が進むにつれ、詳細が明らかになる事(段階的詳細化)」はプロジェクトの定義における3要件のうち1つである。)


よって、Planだけに留まらず、そこからDo-Check-Actionという
サイクルを回して、改善していく事がいかに重要かを体感している。


このPDCAサイクルの考え方は、新規事業の立案などにおいても役立つ。

7.フレームワークについての思考方法を身につける事ができる。

PMBOK*1はもちろん、ITILMVC、DI、O/R Mappingなどフレームを
定義し、それにいかに実装を割り当てるかといった思考を
身につける事ができる。
また、Javaなどのフレームワークの思想を理解する事により、
同じフレームに対して、どう定義しているのかを複数ケース見る事が
できる。(O/R MappingにおけるHibernateiBATISなど)


また、机上の空論ではなく、実際にプロジェクトで適用していくため、
そのような頭の使い方がうまくなる。

8.最先端のプロジェクトマネジメントのノウハウを習得する事ができる。

PMBOKが定着しているのはSIer、もしくはコンサルティング業界くらい
ではないだろうか?
広告制作も「プロジェクト」であるはずだが、広告業界の書籍において、
「広告とプロジェクトマネジメント」みたいな書籍は見かけた事がない。*2


SIerはメディアにおいてもプロジェクトマネジメントの特集がなされる事が
非常に多く、最もその考え方が進んでいる業種の1つであると言えよう。

9.プロジェクトを設計、ディレクティング、ローンチまで持っていける。

これはかなり大きなポイント。
ビジネスシステムやWebサイトは「プログラマWebデザイナー
依頼すれば思った通りのものが出来上がってくるもの」ではない。


一般的にプログラマはテクノロジーに傾倒しており、Webデザイナー
自分の実装したいようにデザインしたがる事が通常である。
よって、ビジネス側の人間として、ビジネス要件と実装の間を橋渡し、
その間をディレクティングする役割を担う事が必要である。


SIer出身の人間はプロジェクトを設計し、ディレクティングできる。
そして、ローンチ後の検収にも余念がない。
外注する際に必要以上の工数をかけたり、費用をかけずに済む。


※私自身の経験から、SIerで経験を積んだ人材はWebディレクター/
Webプロデューサーとしても活躍できると思う。
よって、あえて「システム構築のプロジェクト設計」とはしていない。

10.業界構造的に力関係が厳しい事から、競争力のある人材になりうる。

アメリカのクリントン政権時代の長年に渡る好景気は、学生時代に
その直前の不景気を過ごした世代がもたらしたと言われている。
現在、資源高の恩恵を受ける商社もインターネットが登場し、
「商社不要論」が叫ばれ、事業統合された商社もあった。


だが、その厳しい冬の時代を乗り越えた人材は生きる術を必死に
考え続けた人材なのである。そういった人材が次の時代をつくる。
シリコンバレーの盛り上がりや商社出身の社長が絶えないのも
そういった要因があるかと思う。


業界構造が厳しい中で、必死に生きる術を探し、付加価値を追求する
SIerから優秀な人材が、より排出される事を信じている。
外資系だけではなく、ね。

*1:プロジェクトマネジメントのフレームワーク

*2:他、建築業界はよくわかりません。申し訳ありません。