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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

Googleのプロダクトでは「補完財」の戦略が成り立たない

グーグルの戦略の中核にあるのも補完財におけるイノベーションだ。

グーグルのコアビジネスはインターネット広告の販売なので、ブログ、
ビデオ、オンラインビジネスソフトなど、人々のインターネットの利用を
増加させることはすべて、彼らのコアビジネスにとって補完財なのだ。


そのためこういった製品を無料で提供したり、価格をどんどん切り下げることは、
グーグルのコア事業にとって大きなメリットがあるのだ。

だからこそ、eBay, マイクロソフトベライゾンバイアコムなどに
とってグーグルが心底恐ろしいのだとカーは言う。


グーグルが本当に怖い理由 〔補完財の戦略的価値) via カフェメトロポリス

確かに。
これって、携帯電話と通信費(ARPU)の関係が身近ですね。


じゃあ、オフラインを可能にするGoogle Gearsは?
となるんだけれども、これは「いや、所詮オンラインでしょ?」という
ユーザーをGoogle圏内に引っ張っておくための苦肉の策ともとれる。


Google Analyticsはまさに補完材の関係で
「いいサイトを増やす事がよりよい検索結果につながるから」
Google自身がリリースしている。


一方で、Googleの検索以外のサービスがアーリー・マジョリティまで
いきつけるかというと、そこまではいけていない。


Google Analyticsを除いたコンシューマー向けで最も優れたプロダクト
だと思えるGmailでも、
「Yahoo!メールかHotmailで十分だよね。メッセンジャーもあるし。」
っていうのが大方の考え方だろうと思う。
RSSリーダーも性能がいいとは言えず、日本ではLivedoor Readerのシェア
の方が高いだろう。


よって、その補完関係はアーリーアダプターまでしか成り立っていない
わけで、Intel携帯電話キャリアのように、テクノロジーを意識させずに
ユーザーがGoogleプロダクト間の補完関係を満たすところまでは到達していない。


よって、検索以外のGoogleのプロダクトがリスティング広告の補完財の関係である事
=「Googleが本当に怖い理由」という式は成り立たない。


それは上記エントリ内でも指摘されている。

グーグルのこの戦略にも限界はある。簡単にいうと、
回収できる以上のコストをかけるとこの補完財戦略は成立しない。
グーグルが2006年2月に投資家が予想する以上にコストが
増大していることを発表した際に株価が急落したのがその証拠だ。


ものにはバランスが必要なのである。


とりわけYahoo!のシェアが高いまま推移している
日本ではよりそう思える。


また、日本という特殊なローカライズにもGoogleは消極的だ。


これは、デベロッパーズガイドにおいて顕著で、
Googleは今年6月になってやっと日本語訳が公開されたのに対し、
Yahooは1年以上前に日本語訳が既に公開されていた。
これはグローバルにおける市場シェアと日本市場に対する期待の違いの問題
ではあるが、極度にローカライズされたYahooに対し、
機械的なGoogleは、英語圏はまだしも日本ではアーリー・マジョリティには
少々とっつきにくい印象を与えているように思える。


次々とリリースするサービスは、一方では混乱を生んでいる。
Yahoo!はその点、インターフェースから非常にシンプルであり、
アーリー/レイター・マジョリティ好みと言えるのではないだろうか。


p.s.
とはいえ、こういった視点を変えた見方というのは非常に重要で、
Webサービスにおいてそういった視点を置いているカーの論理は
新鮮に思えた。