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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

クリエイティブジャンプを生むプロセス

有名な広告デザイナーの講習など受けていると、聞いていて
「思考の道筋はわかるのだが、なぜそれを思いついたのか?」
という事例などによくぶち当たる。なぜ思いついたのですか?
と聞いても仕方がない。思いついたから思いついたのだ、
ということになってしまう。別にそのデザイナーがコツの出し惜しみを
しているわけではなくて、そこには立ち戻れない溝があるということ
だと思う。


分析の続きにアイデアがあるか via 広告β
http://kokokubeta.livedoor.biz/archives/51411061.html

そこに立ち戻れない溝はある。


例えば、「起業家が思いついた過去にない形の新規事業」
は、論理的にひも付けできないケースが多い、
と三枝氏の書籍「戦略プロフェッショナル」の中で語られているが、
それも同じ事だと思う。


積み重ねられた経験値から導出されるものは頭の中では
関連づいているが、それは非常に複雑であるが故、
可視化する事が非常に難しい事もある。


私もプロジェクト設計を行う際は、おそらくは多岐に渡る論理から
プロセス、成果物の種類や形式を導く。


それを可視化するのは非常に難しい。
しかし、そこにすごく重要なファクターがあると思うし、
それこそ個人の競争優位性なのかなと思う。


オグルヴィー・メイザーのクリエイティブディレクター阿部昌人氏は
書籍「Webキャンペーンのしかけ方」の中で、自らのアイデアメソッドを
披露している。
(広告β氏の上記エントリを読んで、もう少しこのプロセスに関する事例を
深く見たいと感じた人には、是非この書籍のP18-P30を読んでほしい。)


彼が挙げているアイデアを導出するステップとは
以下のようなものである。

  1. Webキャンペーンの目的をひたすら明確にする
  2. 目的に優先順位をつける
  3. 目的やターゲット属性などの基本情報を頭に入れる
  4. ひとりきりになって考える
  5. 論理とひらめきを衝突させる
  6. アイデアの種が見つかればメモを取る
  7. 論理とひらめきを衝突させる
  8. クリエイティブジャンプを導く


そして、そのチェックポイントは以下のようなものである。

  1. 課題の解決になっているか
  2. 技術に負けていないか
  3. ひとことで説明できるか
  4. 化学変化を試しているか
  5. コミュニケーションをつくれているか
  6. ツッコミを入れたくなるか
  7. 課題の本質を見つめ続けているか(ふたたび)
  8. インターネットに閉じこもっていないか
  9. 自分にしかできないものか(オリジナルな、自分ならではのアイデアか)
  10. ユーモアがあるか
  11. 「もてなし」の精神が入っているか
  12. で、おもしろいか


思い出してみると、メソッドをつくるときは、私もひとりになる事が多い。


過去、新しいレポートの形式や新広告メニューの導入形式を
考えた時は、オフィスのリラックスルームやカフェなどに
入ってひとりでひたすら考えていた。
SIerの頃、プロジェクト設計をした時もカフェに入り浸って、
メモ用紙とExcelとにらめっこしながら考えていた。
そして、アイデアが帰結するとOUTPUTをそれこそ数分で書き上げる。
(もちろん、その前に議論を重ねて、顧客のニーズや社内の実現可能性
など必要なINPUTは押さえておく。)


おそらくクリエイティブなもの(いま形になっていないもの)を導く時、
自分にとってはそういった環境を用意し、アイデアをひねり出す
プロセスが必要なんだと思う。


逆にi-modeのコンセプトをつくりあげた松永真理さんは
メディアの企画担当者などを大勢呼んで、ワイワイとブレストを
やりながらそのヒントを見付けていったと、書籍「i-mode事件」の中で
明かしている。
彼女はアイデアをひとりで導くタイプではなく、ワイワイやりながら
見つけるタイプなんだろう。

ひどく大ざっぱにいうと、彼らは、「どんな問題点に対して
どんなアイデアが適用され、その結果どういう解決をもたらしたか」
ということを普段からずっと観察し続けているのだろう。
それが、いざ仕事となったときに、脳の中で編集されて適用される。
その過程には無意識のブラックボックスがあるのだろうが、
いずれにせよ最初のインプットがないとはじまらない。アイデア出しは
(仕事のオリエンを受けて)分析から始まるプロセスではなく、
普段から観察し、編集し続ける一つの姿勢であるようだ。
アイデアは一日にして成らず、かもしれない。


分析の続きにアイデアがあるか via 広告β
http://kokokubeta.livedoor.biz/archives/51411061.html


そういうアイデアマンについて、共通する事項として、
「事象の原因を考え続ける人」というのはあると思う。


数いる優れたクリエイティブディレクターもコンサルタントも
大前研一も起業家も常に世の中を見渡し、
それを自分の知識としてストックし続ける傾向がある。


アイデアを出す前にそのプロセスがあり、スタート時点の
INPUTの総量が既に大きく異なるが故に、
生まれるOUTPUTも大きく異なってくる。


アイデアの出し方については、それが非常に大きな
付加価値であった広告業界においても、
ずっとブラックボックスであったと思う。
これは、事前のプロセスにおいても、アイデアを出す最中のプロセス
においてもそのように言える。


このあたりの可視化は今後、なされていくとは思うが、
可視化されたとしても一朝一夕には取得できないスキルであろう事は
そのINPUTの総量に起因するんだろう。


つまり、まず事象を捉え、妥協をせず、論理的もしくはひらめきで
その原因を追及していくという事を常日頃欠かさずやっていく事が
優れたアイデアを生み出すために欠かせない事なんだろう。