R25のコンセプトメイキングにおける戦略的アプローチ(書評)
- 作者: 藤井大輔
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/02
- メディア: 新書
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を読みました。
本書の内容
R25は都内の駅などで配布されているフリーペーパーで、
M1層(20-34歳男性)をターゲットとしたメディアです。
2004年に市場に投入され、
現在は、L25というF1層向け兄弟メディアも登場しました。
本書の内容としてはR25のコンセプトメイキングから発行・広告商品確立までの
過程が具体的に書かれており、その中での過程における工夫や
過程を経て得た結果を持っての戦略的な判断が記載されていきます。
非常に臨場感がある内容で、自分の仕事と照らし合わせながら、
面白く読み進めていけました。
M1層のインサイト
R25のコンセプトメイキングの過程では、主に下記から
M1層のインサイトを得ています。
- 定量調査:10,000名を対象としたインターネット調査
- 定性調査:200名を対象としたグループインタビュー(飲み屋でのディスカッション含む)
その中で、著者が得たM1層のもやもやとしたインサイトは
- ホントのホントの本音は、親友にもなかなか話せない
- 自分のニーズをうまく言葉にできない
- 聞くとそれなりに答えるが、真のニーズではなく空気を読んだ答えになってしまう
- 新聞を読んでいないが、「日経新聞を読んでいる」と答えてしまう
- 読まないといけないとは感じている
- 点のニュースは読んでいるが、深く解釈できていない
- 解釈したいと感じている
- 触れるのは、仕事場では仕事に関する情報で家では趣味に関する情報
- 「帰りの電車」は穴場
定量調査では出なかった答えも含まれており、定量調査の結果に疑問を感じた著者が
セグメントされたグループインタビューにて次々と明らかにしていったもの。
この点、かなり参考になりました。
定性調査と定量調査をうまく使い分けて、インサイトを取り込む事が
ターゲットに適切に評価されるメディアにつながっているわけです。
また、「帰りの電車」で読まれるメディアとして定義したが故に、
広告主や配布場所についてブレなく意思決定できている点は面白いですね。
M1層のインサイトに関しては、下記の書籍も参考になります。
オトコの仮面消費 (McCANN ERICKSON INSIGHT SERIES)
- 作者: 大沼利広,堀井武宏,村口賢一郎,山下大輔,松浦孝行,有馬未来子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2009/01/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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明確なロジックから新規事業が生み出されている
リクルート「創刊男」の大ヒット発想術 (日経ビジネス人文庫)
- 作者: くらたまなぶ
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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R25の事業立ち上げ過程に関しては、この書籍にも共通している点が多々あり、
リクルートの新規事業立案プロセスが垣間みられます。
特別な事は何もありませんが、ターゲットを理解し、
コンセプトメイキングの過程を
何よりも重視している事が非常に特徴的だと思います。
コンセプトはそのままデザインや広告商品に
反映されていきますので、ここがダメだと後工程も諸々ブレが出る形
になってしまいます。
プロジェクトマネージメント
アイデアの立案者とアイデアを立ち上げ・導入まで
持っていく人を、わけている事も特徴でしょう。
(近代の経営モデルでは普通な事だが、日本では珍しいと思う)
著者の藤井氏はR25事業の立ち上げのプロジェクトマネージャとになるか
と思いますが、下記の業務を適切にこなし、アイデアを
市場に評価される形まで持っていったと言え、
その業績は素晴らしいの一言に尽きます。
・コンセプトメイキング
・ファシリテーション
・リソースの調達
・スケジュール調整
テクノロジーやマーケット、機会も大切ですが、それを適切に
落とし込むプロマネも、また必要なものですね。
まとめ
本著は改めて色々と考えさせられる内容で、自分の中でプロジェクトの
優先度が少し変わりました。
新規事業の立ち上げやイノベーティブなサービスを担当されている方は
是非ご一読を。