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元SIerの今はWebビジネス中心なヒトが日々のトピックを綴ります。

ホンハイの経営と日本の経営


鴻海精密工業(以下、ホンハイ)CEOのインタビューが記事になっており、
興味深かったのでエントリ。


ホンハイは機器メーカーが開発した商品の製造を請け負う
EMS(電子機器の受託製造サービス)企業。

ホンハイの企業文化

  1. 「辛勤工作的文化(勤勉に働くこと)」
  2. 「負責任的文化(各人が責任を負うこと)」
  3. 「団結並且資源享受的文化(団結し互いの資源を共有すること)」
  4. 「有貢献就有所得的文化(貢献すれば見返りが得られること)」


1:成果だけにフォーカスする社員を是正し、雰囲気を向上させる。
2:責任感を明確にし、役職や担当業務における責務にズレないようにする。
3:成果を上げるために個別最適に走る社員を是正させる。
4:非常に短期スパンなリターンにより、モチベーションを向上させる。


MECEに出来ているような気がした。
でも、「顧客」の視点が薄いですが、「顧客満足は貢献の先にある」と
考えると、然りという気もする。

トップダウン

「非効率な民主主義よりも、合理的な独裁の方が企業にとって重要」


ボトムであーだこーだがしゃがしゃして、ずれた戦略立てて、
決済プロセスでやり直し!となるよりは優秀なトップマネジメントが
トップダウンで決済していった方が組織としては効率的
最近、頭角を現してきているApple、マクドナルド、Softbank
その代表か。
ベンチャーだったら、DeNaやL&M、サイバーエージェントか。

あ・うんの功罪

通常、製作に1カ月から1カ月半かかる金型を1週間で用意できるというのだ。


このあたり、書籍「インクス流」を読めば、日本の現状がわかると思う。
暗黙知暗黙知として、伝承してきた職人文化の弊害が、
日本にはある。「あ・うんの功罪」とも言うべきか。


そして、それは知識集約型労働の生産性を上げる事ができない一因
でもある。
プロセスを可視化できる人材は少ないから、その共有が出来ていない。

多数の職人を抱える新潟県燕三条の金属加工業者が一手に引き受けていた。ところが、最近では、ホンハイもこの鏡面加工を引き受けるようになっている。


これは知らなかった。
iPodのプロダクトに磨きをかけているのは「日本」という
評判であったが、そのサプライチェーンからだんだんと外されよう
としているわけか。。

ホンハイを影で支える日本技術とその流出

「“日本から技術を流出させるつもりか”と、私に後ろ指をさす人はいるだろう。しかし、十分な生産量を前提としなければ、私の作りたいものは作れない」


モノづくりの人としては、「可能性に挑戦する」事が日本を支えてきたし、
それが国内においては、様々な要因により達成できない状態だとしたら、
海外に人材が流出し、その技術が流出するのを止めようがない。


その人の人生なのである。


そういえば、以前中国の自動車ビジネスのドキュメンタリーを
見た時に深く印象に残ったシーンがあった。


中国の自動車工場は日本の生産改善を学ぶために、リタイア後の
日本の人材を積極的に採用している。
採用された日本人は「確かに技術流出の面は否めないが、l
自分が貢献できる事を価値として提供していけるという事は
幸せな事だ。大変だけどね。」と話していたのだ。

事業の選択と集中

「日本メーカーは、システムLSI(大規模集積回路)の設計やソフトウエアの開発といった知識集約型の事業に集中した方がいい。
労働集約型の製造は台湾勢に任せてほしい。韓国メーカーに対抗してBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を含む世界市場で勝負する製品を作ろうというなら、なおさらだ」


日本人は「勤勉」である。
あるが故に「自分にできることはできるだけやろう」という風潮がある。
これは、良い面もあり、悪い面もある。


良い面は、
「業務間の「間」をカバーできる事」
それができたからこそ、製造業において、非常に高い品質を達成できたし、
コストもそういった人たちがカバーしていたところは低減できた。
フル残業により、納期を守る事もできた。


一方で、悪い面
「自らの強みを活かせる部分に集中的に時間を投下できない事」
こちらは知識集約型労働スタイルにとって、致命的である。


コンセプトを考えられれる人は手も動かせるだろうが、手を動かしている
時間は前者に比べ、組織にとって提供している付加価値が小さい。
よって、組織にとってはリターンが低くなる。
私が、プロジェクトの現場で感じた商習慣を乗り越え「適材適所」を
もって推進すべきだ。という考えはこのあたりから来ている。


また、これは「事業」という側面にもあてはまる。
「できそうなものはやろうぜ!」という文化・精神は
「強みを発揮できるところに組織のリソースを集中投下する」
という「選択と集中」の考え方と相反する。


例えば、SONYがサムスンと液晶に関する合弁会社を建てた時、
なかば裏切り者扱いであったが、SONYはそこに自社リソースを
投下するより、画像エンジンなどのコアな部分に投下した方がよい。
と判断しただけである。
(もちろん、その決定はいま柔軟に変化しようとはしているが。)


グローバルに考え、経営していくという意味は
「海外に市場があるから、打ってでようぜ!」
という短絡的なものではない。例えば、以下のような動きが該当する。

各自動車メーカーが以前、米国で為替の問題で苦しんだ経験を活かし、
政治家に関係をもつロビー活動を行い、半完成車を輸出するのではなく、
現地に工場を建て、地域の労働をカバーする。


各地域で稼働しているシステムの運用に、ITILのプロセスを
適用し、インドにアウトソースし、インドのセンターで集中管理する。


統一したマーケティング戦略を実行するためにWPPなどの
メガ・エージェンシーに依頼する。


グローバル経営は、本来こういった総合的な活動を指す。
SONYがサムスンと組んだのは、その一環でしかなかったと思う。


「強み」に特化し、かつ競争優位性を失わないような経営判断を
否応なしに迫られてくる。
日本にとっては、ここ10年が節目だろう。

  • 参考書籍

インクス流!―驚異のプロセス・テクノロジーのすべて

インクス流!―驚異のプロセス・テクノロジーのすべて