クラブシーンとプログラミング
バンドを雇えばお金が掛かる。で、機械ですべてやってしまおうという
発想から、プログラミングというものは始まった。
それは非常に合理的な理由によるもので、機材の発達に伴い、
今ではオーケストラのサウンドもマシン一つで創りだせる時代となった。
クラブ・ミュージックのそもそもの原点は、お金や楽器がなくても
ターンテーブルでヒーローになれる、譜面を読めなくても安価な
ドラム・マシンとサンプラーで曲が作れる、という
一種のハングリー精神的な部分であったと思う。
音楽学校を出ていなくても、長い下積み生活を経なくても、
アイデアとセンスさえあれば、誰もが一躍有名プロデューサーに
なる事ができるという夢がそこにあり、クラブ・ミュージックは
発展してきた。
[Re:Jazz] a love affair ライナーノーツより
これを読んで思ったんだけれど、
今現在のWebプログラミングの状況を表しているような気がした。
まず、インフラが整った。
開発環境はメインフレームやクラサバ環境ではなくて、
自宅のWindows PCで十分だ。
プログラマは、高価なコンパイラが無償になったり、パーツである
オープンソースが公開された事により、それを活用できるようになった。
これは、ターンテーブルやドラム・マシン、サンプラーの
ようである。
コンピューターサイエンスを専攻していようが、なかろうが、
アイデアとセンス次第で良いソフトウェアを作る事ができる。
レンタルサーバーなどが充実し、公開するための環境も整った。
以前は自宅サーバーだったし、自宅サーバーの構築&費用も
それをあきらめさせるに十分なものだった。
そして、公開するための「Web」という箱ができ、
一般人もWebを使うようになり上に多くのトラフィックが
集まるようになった。
その上、そこから口コミで発展していく
ソーシャルブックマークなどの機構が出来た。
以前は、そもそも公開する場所がなかった上に、
Webに公開したところでトラフィックを集める事が難しかった。
また、ベクターに公開したところで、ヒットするのは
極少数のソフトウェアのみであった。
インストール型だとダウンロード、インストールする
コストもかかるため、広まらないのも仕方がない。
しかし、今はブックマーク経由でURLをクリックするだけでいい。
そして、実際にそのようなやり方で無名から名をはせたGeekは
数知れない。
そこには夢があり、モチベーションの源泉がある。
これは、クラブという箱を手に入れ、クラブ界隈の口コミで
著名になっていくDJと似ている。
一部の人しか楽しんでいない意味でも、Geek界隈とクラブ界隈は
似ているのかもしれない。
同時に、その両者を体験する人は、あまりいないのかもしれない。
Geekはクラブには行かないだろうし、
クラブに行くような人はプログラミングに興味がないように思える。
が、DJも創っているんだ。その時、その場所にしかない空間を。
クラブシーンの人口の裾野が広がっているとは正直言えないと思う。
まあ、敷居が高いし、人も選ぶからだろう。
であれば、どうやればWeb上に公開されたサービスが広がっていくのか。
こっちの方が与し易しな気がする。